書の美悠々(中日新聞折込・安城ホームニュース) 24回の連載記事です。 2013年に執筆の1回~12回(前半)をご紹介いたします。 2014年の13回~24回(後半)はこちらのページをご覧ください。
第1回 ・ 1月号
墨:作ってから50年は経った
油煙の墨です。良い墨は、
古くなれば古くなるほど
趣のある墨色になります。
筆:10年前から愛用している
柔らかい羊毫の筆。良い筆は
繊細な線質を表現できます。
ポイント:墨のにじみが
ほんのりと綺麗に出る紙を
使うといいでしょう。
第2回 ・ 2月号
紙:にじみの少ない紙で、
少し金銀の装飾があります。
はっきりとした線で書きたい
ときは、にじみのない紙を
使うといいと思います。
筆:大小の文字を
組み合わせて書くときは、
同じ筆でも、筆を変えても、
どちらでも大丈夫です。
ポイント:文字の配置を
少しずらして、リズム感を
表現するといいでしょう。
第3回 ・ 3月号
構成:シャープな線で、
行間を詰めて、スマートな
印象にしています。
墨:作られて50年は経った
松煙の墨を使用しています。
筆:毛先のまとまりが良く、
弾力のある、細めの筆です。
ポイント:筆圧の変化を抑え、
軽やかに書くといいでしょう。
第4回 ・ 4月号
構成:行頭や行脚を揃えず、
3つの集団を配置しました。
このような書きかたを
散らし書きといいます。
筆:毛がたいへん繊細な
柔らかい羊毫の筆です。
墨含みが良いので、
一筆で書いています。
ポイント:墨が続かなくて
途中で墨継ぎをする場合は、
左上の春の文字で墨継ぎを
するといいでしょう。
第5回 ・ 5月号
構成:縦に流す線を強調し、
すっきりとした雰囲気に
仕上げています。
筆:柔らかすぎない、
弾力のある羊毛の筆です。
穂先を紙に食い込ませて、
引き締まった線になるように
書いています。
ポイント:黒々とした墨は、
にじみが広がりすぎると
黒い団子のようになって
田舎くさい野暮な印象に
なりますので、
墨の量やにじみの加減に
注意するといいでしょう。
第6回 ・ 6月号
構成:気楽な筆運びと
線の太細を意識しています。
墨色:写真では、筆の線と
にじみの境目が明瞭でなく、
黒い塊に見えますが、
実物は、筆線とにじみの
色の濃さに差があります。
ポイント:一文字の中に
太い線と細い線を
組み合わせて書いて、
文字に立体感を出すように
意図するといいでしょう。
第7回 ・ 7月号
構成:字間を広くして、
余白を多く取ることにより、
すっきりとした構成に
しています。
紙:にじみの少ない、
かすれた線が長く続く
紙を使用しています。
ポイント:筆に含ませる
墨の量を少なめにして、
さらりとした印象の作品に
第8回 ・ 8月号
構成:墨継ぎの位置と
文字の太細の変化で、
黒の強弱のバランスを
適度に配置しています。
紙:にじまない赤い紙です。
赤色がたいへん強いので、
文字がはっきり見えるよう、
墨は黒々と磨っています。
ポイント:行の高さを
徐々に変えています。
この和歌であれば、
澄んだブルーの色の紙を
使用してもいいでしょう。
第9回 ・ 9月号
構成:途中で墨継ぎを
しないで、墨が徐々に
かすれていくように
文字に大小をつけて、
単調な文字の羅列に
ならないようにしています。
墨:黒々とした墨色で、
キリッとした印象の文字に
ポイント:線と線を適度に
つなげます。過剰につなげ
すぎると、線が煩雑な
印象になるでしょう。
第10回 ・ 10月号
構成:画数の違いにより、
文字の大小を自然につけて
3文字を配置しています。
墨:筆線とにじみの
色の境目はくっきりと、
にじみの広がりは
まろやかに、上品な
墨色を意図しています。
ポイント:墨の箱に
青墨と書いてある墨は、
わざとらしい青色を混ぜた
ものが多くありますので、
そのような青系の墨は
使わないようにしましょう。
第11回 ・ 11月号
構成:右側に広がる字形と、
すっきりとしたしんにょうで、
軽快な作品にしています。
筆:柔らかく細い毛の
質のいい羊毛は、
墨の含みが良いので、
ふっくらとした線で
書くことができます。
ポイント:丸っこい回転の
リズムで文字を書くときは、
線を方向転換するときに
押さえたり止めたりしないで
同じ速度で筆を運ぶと
いいでしょう。
第12回 ・ 12月号
構成:少し段差をつけ、
細身の線でふわっとした
筆:イタチの細筆です。
太細の変化を出すよう、
筆圧に抑揚をつけて
ポイント:紙の大きさに
対して、やや控えめに
書くと、上品になります。